雑文

古いガラス瓶だ。
ヒタヒテと流れる時間を物ともせず、涼しげに立つ姿がいい。瓶コレクターではないが、
部屋にゴロリと転がっていて、何処から拾って来たのかも憶えていない。
頁を飾ることになったのは、質感が好きなだけじゃない。此処で映像制作にまつわる散文を書き散らかして思うのは、「 風化 」の一言に尽きるわけで、デジタル嵐の只中にいる吾身としては、暗室の暗さも、映写機がフイルムを掻き落とす音も、ビデオデッキも数年前のコンピューターもソフトも、何もかもをデジタル嵐が蹴散らかして風化させてしまうのを、呆然と立ち尽くして見てきた。その変わりの速さは、風化と言う優美な言葉ではなく、ポンコツ化と言い表した方が当たっているかもしれない。
悲しいのは、ポンコツでもそれなりの機能美とでも言うモノが在ればいいのだが、近年のポンコツは煮ても焼いても駄目なポンコツと化してしまうことだ。そんな思いでガラス瓶を見ると、幸せな奴だと思う。
仕事をおえた空瓶ですら、モノとしての存在感を漂わせているのは、風化する事なく過ぎた時間をたっぷりと吸い込んでいるのだろう。
因みにこのガラス瓶にはScott's Emulsion と言うメーカーの肝油が入っていた物らしい。
私はデジタルの器に何を入れようとしているのか・・・。
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